2008年5月21日水曜日

SEV

クルマ方面では使っている方も多いチューニングパーツ、SEV。最近は自転車向けにも展開しているらしい。曰く呼吸が楽になる、フレーム剛性が上がる、クルマなら燃費が良くなるetc、謳われている効果は枚挙に暇が無いほど。自分は全く信じていないし違いも判らないのだが、「確実に効果はある」と力説する人も多い。面と向かって否定して角を立てるのも大人げないし、呼吸が楽になるとか回復力UPとかはお守りとして信じる人がいてもいいのではと思う。パワーストーンみたいなものだ。

しかしながら、剛性がどうのこうのと呟きつつ、朝から晩まで部品の形状をいじくり回すようなことをしていると、「SEVを貼ると剛性が上がる」については何とも我慢できなくなってきたので書いてしまった。



公式サイトで触れられている理屈らしきもの

「金属部品をイオン化することで弾性力が向上する」
「金属の分子を活性化させることで金属疲労を防止」

というのは、正誤以前に用語が意味不明だが、理論の不備をもって実験的事実を否定する事は出来ない。従って実験データ無しに、謳われている効果の全てを否定するのは困難である。しかしながら、いくつかの効果については、本当に効果があるというなら提示されているべきデータ、というものがある。

謳われている数多の効果の中で、「SEVを貼ることで剛性が上がる」というものは、自分にも理解できる用語で効果が書かれていて、かつ比較的簡単に検証が出来る。SEVの言うところの「剛性」が自分の理解している「剛性」と同じものであればの話だが。

同じ長さと断面形状の金属棒2本を用意して、SEV、SEVとほぼ同じサイズ&重量の金属片をそれぞれに貼り付け、錘をぶら下げるなり、ばね秤で引っ張るなりしておいて、たわみ量を測れば事足りる。自腹でSEVと実験材料を買う気が起きないので、ここに検証結果を書くことは出来ないのは残念だが、「剛性アップ」を売り文句にするのに、こんな簡単な実験のデータも示されたことが無いというのが全てを物語っていると思う。むしろ反証不能な効果のみを列挙した方が、効果とか面白みがあったのではないかと…。

では、前述のような実験で測定可能な剛性向上効果は無いとすると、何故「貼ったことによる変化は明らかに体感できた」更には「貼ったことを知らせないでも変わったって言われたよ!」という声が上がるのか。前者はプラシーボかもしれないが、後者は盲検になっているではないかとおっしゃるかもしれない。 しかしながら、バネとみなせる物体に質量物を貼り付けたら固有振動数は変わる。例えば「ビビリ振動が消えて滑らかになった!剛性上がったからかも?!」というのは、PCケースに防振用の鉛板を貼って静かになるのと変わるところは無い。また、強力な接着剤で貼ったとしたら、今度は補強板を貼り付けているのと変わりなく、これまた変化自体はあるはずだ。

SEVを貼ることによって変化があったということと、SEVには鉛の板とは違う効果があるということは全く別なのである。 その事をうっかり、もしくは意図的に失念した「貼ったら変化を体感できた→疑ってたし原理は判らないんだけど効果があるのは確か」というもっともらしい体験談を広めることに成功したのが、数多の疑似科学系グッズの中にあって、SEVがこれだけ売れた理由ではないかと推測する。

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